Thursday, December 10, 2009

アメリカ人のセックス・コラムニスト、ダン・サベージ=サベージ・ラブのトークショーに行ってきました。

シアトル在住のダン・サベージは、バンクーバーのウィークリーペーパー「Georgia Straight」にコラムを持っています。毎週このペーパーを手にすると、ロバートが一番最初に読むのがこのコラム。一人でよく笑っています。

「レズビアンの女の子が、男と一夜限りで遊んだ後に妊娠だって。このレターによると、彼女にはレズビアンのパートナーがいるんだな…」とか、「私の会社には女装してくる男性社員がいて、その人は性転換手術を受ける予定です。この人は女子トイレを使うので、私としてはそれに抵抗があるんです…」など、私に読んで聞かせてくれます。ロバートと私の間では、ふだんはイベント物のインフォは私が仕切り決定権を握っていますが、今回に限ってはロバートの「行きたい!」の一言でサベージ・ラブとして知られるダン・サベージのトークショーを聴きに行くことに。

会場はブリティッシュ・コロンビア大学のチャン・センター(知る人ぞ、知る!でしょ。私はあそこはクラシックのコンサートしか行われない所だと思っていました。ダン、すごい!)。満席に埋まった観客席の半分は20代のニーチャン、ネーチャン。多分、UBCや市内の大学生。残りの半分は見るからにゲイのカップル、明らかに髪が短くてがっちりした体躯のレズビアンのカップル、そして、すっごく魅力的な女性カップル(あやしげな魅力が。。。)、そして私たちみたいな、会場の平均年齢を上げているオジサンとオバサン達。こういう観客ってすごくフレンドリーでノリがいい!ジーンズにTシャツのラフな姿のダンが壇上に現れると会場は拍手喝采。

ダンのトークショーは、すべてこの日のために送られた質問に答える形式で行われました。なので、ダンは何十枚もの質問を書いたカードを手にしています。

質問:僕と妻は成人した子供がいる幸せな家族です。僕は会社の重役で、子供たちとは何でも話し合う関係です。僕は女装が好きで妻とそうやって夜の生活を楽しんでるんですが、それを子供にも話すべきでしょうか?
ダン:ノー!そんなこと話す必要ありません…

質問:私はレズビアンで、19歳です。すごく好きな女性がいて、私たちはフロリダに住んでるんだけど、結婚したいと思っています。フロリダで結婚してもいいかしら?
ダン:フロリダでのレズビアンの結婚は危ない!実はね、前にフロリダに旅行で行ったレズビアンのカップルがいて、3人の子供も連れて行ったんだよ。18年間連れ添ったカップルだ。女性の一人が病気で危篤状態に陥り、病院に運ばれたんだ。パートナーの女性は病室に入れてもらえなかった。フロリダではゲイやレズビアンが法的に認められてないからね。危篤状態の人の病床には同性愛者のパートナーは禁物ってわけだ。彼女は病室で一人で死んでいったんだ。パートナーの方は権力に立ち向かうこともできた。だけどそうなると刑務所に入れられて、母親を失った3人の子供はもう一人の母親まで失いかねないというリスクを負うことになる。だから彼女は18年間連れ添ったパートナーの死の枕元にいてやることができなかったんだよ。アンチ同性愛のフロリダで同性愛者が一緒に暮らすにはこういうリスクがあるからね。

自身もゲイをオープンに公表しているダン・サベージは、毎週5000通のメールを受け取るそうです。「そのうち2500通は本当に相談的なもの、半分は嫌がらせ」と笑っていました。

ダン:最近では、僕のところにメールですごい写真が届くんだよ。僕は病気の専門家じゃないので、専門医に行ってもらいたいんだけど。そんな写真を間違って飛行機の中で開けちゃったりしたら大変なことになるんだよね。隣に座ってる人が慌ててフライト・アテンダントを呼んでさ、この人がコンピューターを見ながらマスターベーションしてる!って言ったりするんだ。だから僕はその写真を見せてさ、「こんなので、できると思う?」って言ったりするんだ。会場は爆笑。

質問:妻と私は年配のカップルです。妻はセックスに全然興味がなくなったし、体にすら触らせてくれません。それでは私の方が満たされないのです。こんな時はどうしたらいいのでしょう?
ダン:あっ、それはね、別の相手を見つけるしかないね。

この一言に会場がシーンと。ダンがそこで話を続けました。

「ゲイのカップルはへテロのカップルよりベッドでの満足度が高いって言うけど、それはだね、、、きちんとコミュニケーションしてるからなんだよ。なにをしてもらったら嬉しいか、ちゃんと話し合うからなんだよね。ヘテロはそれがあまりないだろう?」と。な~るほど、と頷く観客。

ダンはトークの中で婚姻関係にある自身のパートナーの話も出します。彼とは、同性間の結婚が合法的に行われているバンクーバーで結婚したそうです。アメリカではまだ同性間の結婚はもってのほかの風潮なので、カナダに来て結婚するゲイ・レズビアンのカップルが多々見られます。

観客の一人がダンに聞きました。「結婚してるのに、どうして彼のことを”ボーイフレンド”って呼ぶの?」

「あっ、それはね、アメリカではまだゲイの結婚が認められてないから、結局ハズバンドでなくボーイフレンドって呼んじゃうんだよね。僕とボーイフレンドと息子の3人でよくカナダまでスキーに来るんだけどさ、カナダに入国する時、審査官が僕たちの関係を聞くんだよね。だから、これは僕のハズバンドで、後ろにいるのが息子ですって答えたら、”ウエルカム・トゥー・カナダ!”って言われるの。ところがだよ、スキーが終わってアメリカに帰る時、アメリカ側の移民審査官から同じ質問を受けるわけだ。これは僕のボーイフレンドで、こっちは僕たちの息子って言答えたら、鼻でせせら笑われるんだよ。お前たちみたいなゲイのオカマヤローが子供まで育ててるのか?って言いたげな。息子にはさ、これまでは”アイツらはブッシュの手下の人権を無視したヤローたちなんだよ”って言えたけど、新しい政権になってからはなんて言おうか、今考えてるところなんだ」とダン。

ダンの2時間のテンポの速い弾丸トークショーはお笑いの世界で、時にはホロッとさせられました。フツーの人々にはギョッとするような質問にも、きちんと論理的に答えるところが彼の魅力です。

帰りの車の中でロバートが、「ダン・サベージのメッセージは究極のところ人権擁護なんだよな」と一言。この発言に少し驚いた私。なーんだ、単にエロイ系のお話が好きなだけじゃなかったのねと少し感心。

ダンの話を聞いてるとアメリカという国を違う角度から見れるようになります。キリスト教原理主義者の多い国なので、州によってはゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・性転換者の人権がいちじるしく蝕まれている状況。アメリカが誰にとっても住みやすい国になるよう応援してるよ、ダン!

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